名古屋ベンゾジアゼピン訴訟の詳細
このページでは、平成25年から令和元年にわたる「名古屋ベンゾジアゼピン訴訟」の詳細な経過、並びに被告準備書面及び被告証拠等について、順次、その詳細を全面公開する。
原告:多田雅史
原告代理人:柴田義朗弁護士、高岡伸匡弁護士
被告:研究開発法人 国立循環器病センター
被告代理人:小原法律事務所 古川智祥弁護士、増田哲也弁護士(元みつや法律事務所)
国立循環器病センター 理事長
小川久雄
被告弁護士
古川智祥
被告弁護士
増田哲也
1.行政事件訴訟法による2次訴訟
1.名古屋ベンゾジアゼピン医療過誤(薬害)訴訟の確定判決で(下記の2項)、被告(国循)は複数の注意義務違反が認定され、損害賠償金の支払い命令が確定した。
2.医療法施行規則第12条により、「医療事故情報収集等事業」として、「事故等事案」を生じた特定機能病院(国循)は、公益財団法人日本医療機能評価機構へ「事故等報告書」(同条)へ報告する義務があるが、被告(国循)は「我々の考えは裁判所の判断と異なる」などとして、同報告書の提出を拒否している。
3.そこで、行政事件訴訟法により、被告(国循)に「事故等報告書」の提出命令を求める訴訟を、名古屋地裁に提訴し、現在、同民事9部(角谷昌毅裁判長)に係属中である。
4.被告(国循)は、依然として、「報告義務がない」、「医療法は患者の利益保護を目的としていない」などとして、医療法の報告義務の履行を拒否し、行訴法の訴えを退けるように主張している。
5.原告は、医薬品医療機器法第68条の10により、ベンゾジアゼピンの副作用について、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)への報告も求めて、請求を拡張している。
2.名古屋ベンゾジアゼピン医療過誤(薬害)訴訟の確定判決
4.名古屋ベンゾジアゼピン医療過誤(薬害)訴訟の判決の報道
5.原告及び被告の協力医の意見書
A.原告協力医の意見書
⑴東英樹医師(名古屋市立大学病院精神科副部長)
⑵徳倉達也(名古屋大学医学部付属病院精神科医長、東邦ガス㈱診療所精神科)
⑶中山明峰(名古屋市立大学耳鼻咽喉科准教授)
⑷有馬成紀(醍醐病院名誉院長)
⑸H.M.(M循環器クリニック院長)
B.ベンゾジアゼピン報告書
①厚生労働省ベンゾジアゼピン医薬品添付文書の改訂
②独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)調査結果報告書
③米国国立衛生研究所(National Drug Overdose Deaths)
④国連麻薬統制委員会(INCB)の2010年次報告書
⑤処方薬依存症の理解と対処法(成瀬・水澤)
⑥臨床精神医学2006年Vol.35,No.12_ベンゾジアゼピンの依存と離脱症状(辻敬一郎)
⑦抗不安薬・睡眠薬を長期間使ってはいけないのかーベンゾジアゼピン系薬剤を中心にー(辻敬一郎・田島治)
⑧日本医師会雑誌(巻頭言)_樋口輝彦(NCNP理事長・総長)
⑨ベンゾジアゼピンの副作用に関する特集の医学文献の紹介
C.被告協力医の意見書
⑴松本俊彦(国立精神・神経医療研究C)
⑵和田央(大阪赤十字病院精神科)
⑶井上有史(静岡てんかん・神経医療C)
⑷成冨博章(千里中央病院、元被告病院循環器内科)
⑸中野美佐(市立豊中病院神経内科)
D.松本医師の医学文献等
➊鎮痛薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害の対応と治療
❷鎮痛薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害・中毒・離脱
❸医薬品・医療機器等安全性情報(No.365)
❹デパス向精神薬指定の根拠とは
❺依存の問題~常用量依存を含めて(Modern PhysicianVol.34 No.6)
❻ベンゾジアゼピンの常用量依存を防ぐには
❼処方薬乱用にみる精神科医療
❽依存とアディクション
❾薬物依存症に対する最近のアプローチ
❿2017年3月17日 薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会議事録(松本俊彦参考人)
⓫処方薬依存
⓬うつ病治療~ベンゾジアゼピンの功罪~
⓭全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査
⓮わが国における最近の鎮静剤(主としてべンゾジアゼピン系薬剤)
⓯わが国の自殺の現状と自殺予防に期待する薬剤師の役割
ベンゾジアゼピンの副作用に関する特集の医学文献の紹介
「特集」として発行されている文献を以下に紹介する。
① 臨床精神医学(2003、Vol.32 No.5)_特集 今再び、向精神薬の安全性を問う
② 臨床精神医学(2006、Vol.35,No.12)_特集 ベンゾジアゼピン系薬物の功罪
③ 臨床精神薬理(2013、Vol.16,No.6)_特集 ベンゾジアゼピンと処方薬依存を巡る問題
④ 薬局(2015、Vol.66,No.12)_Bz受容体アゴニスト
⑤ 臨床精神薬理(2017、Vol.20,No.9)_特集 向精神薬の多剤規制と減量・離脱の実際
⑥ 調剤と情報2018年6月号(特集 ベンゾジアゼピンちょっと待った!)
⑦ BzRAsの過去・現在・未来(辻敬一郎、田島治)➡各国のベンゾジアゼピン規制等の内容を紹介している
⑧ アルコール薬物関連障害の診断・治療ガイドライン(平成14年12月15日)じほう社
⑨ 精神医学症候群(第2版)_別冊日本臨床、新領域別症候群シリーズNo.39
⑩ 臨床精神薬理(2018、Vol.21、No.3)_過剰診断と処方薬依存症(辻敬一郎、田島治)
6.被告当事者及び被告協力医の紹介
A.医療事故当時者医師(国循病院)
大江洋史(元国立循環器病センター)クロナゼパム(ランドセン)処方医
医療事故当時者医師
・被告提唱の「てんかん類似めまい症」へのベンゾジアゼピン(ランドセン)の処方は、原告の1例しかなかった。
・上記の試験的処方は、被告内部の倫理委員会の承認を得ていなかった。
・仮説の「てんかん類似めまい症」の治療は、原告以降は有効性が確認できずに、中止されている。
・ベンゾジアゼピンの「常用量依存」は知らない。
B.被告協力医
国立精神・神経医療研究センター
(NCNP)
精神保健研究所 薬物依存研究部 部長
松本俊彦
被告協力医の意見書の趣旨
・ベンゾジアゼピンは薬物依存を生じない
・ベンゾジアゼピン「常用量依存」の患者を1 人も診断した経験がない
・「ベンゾジアゼピン常用量依存」という診断は「理念的診断」である。
・ベンゾジアゼピンの離脱症状は、ベンゾジアゼピンの服用を中止すれば2~3週間で自然軽快するので、医学的治療の対象とはならない
・仮にベンゾジアゼピンにより「薬物依存」となっても、医療上処方された薬物であるため、誰も薬物依存とは診断しないし、薬物依存専門治療の対象ともならない。
・ベンゾジアゼピンの力価をジアゼパム換算で評価する方法及びジアゼパム換算で 2700mg を薬物依存閾値とすることは採用できない。
日本赤十字社 大阪赤十字病院 精神神経科部長
和田 央
・ベンゾジアゼピン薬物依存の発症の原因は、麻薬や覚せい剤と異なり、誰
もが罹患するわけではなく、ベンゾジアゼピンを服用する患者の性格傾向に
発症の原因がある。
独立行政法人国立病院機構
静岡てんかん・神経医療センター 院長
井上 有史
・ベンゾジアゼピン(クロナゼパム)の常用量依存の経験はない
元国立循環器病センター
脳血管内科部長
成冨博章
仮説「てんかん類似めまい症」
の提唱者
(医療法人協和会 千里中央病院長)
・国循が提唱する「てんかん類似めまい症」の仮説は、各種学会で認められ、ベンゾジアゼピン(クロナゼパム)の処方は、有効性及び安全性が確立している。
市立豊中病院神経内科部長:当時、
現在:地方独立行政法人 市立吹田市民病院神経内科部長
中野美佐
・ベンゾジアゼピン減薬時に発症する症状は、すべて原疾患とみなすべきである
全国ベンゾジアゼピン薬害連絡協議会(BYA)